1.「廃棄物」という表現に対するイメージ
ハイフィールド行政書士法人の方波見です。
廃棄物処理法では「廃棄物」について「廃棄物とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のものを言う」と定められています。
一般的に考えてネガティブなイメージでしょうか。
現在の我が国においては最終的に捨てられる、つまり最終処分される産業廃棄物の量は産業廃棄物発生量の5%以下と言われています。
その反対に産業廃棄物発生量の50%程度は再生利用されています。
その意味では、「廃棄物」は「捨てるしかないもの=ゴミ」という面もありますが、「再生利用できる価値があるもの」と考えることができ、むしろその割合の方が圧倒的に高い。だから決してネガティブなものではないのです。
そうは言っても「廃棄物」という言葉がネットニュース、新聞やテレビで使用される場合はそのほとんどが「廃棄物の不法投棄」「産業廃棄物処理施設の事件、事故」であり、事件事故、環境破壊や犯罪などと結びつけられてしまいます。
2.廃棄物処理法での定義
廃棄物処理法では「廃棄物」をどのように定義しているのでしょうか。
第2条第1項にて定義づけがされています。
「廃棄物とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く)をいう。」
どういうことかと言うと、廃棄物は「①固形状の汚物」「②液状の汚物」「③固形状の不要物」「④液状の不要物」に分けられ、このいずれかに該当するということになります。
「汚物」はなんとなくイメージがつきそうですね。
一方で「不要物」はどうでしょう。
同じ物を目の前にして、いざそれを複数の人々が判断としても個人の状況や価値観によって「不要物」である場合もあれば「価値のある物」になるのではないでしょうか。
廃棄物の実務上、そして私たちのように廃棄物処理業を専門とする行政書士にとっても「不要物か否か」が大変重要な意味を持ってきます。
3.「不要物」をいかに考えるか
なぜ「不要物」に拘らなければならないのか。
「廃棄物処理法」によって規制されるか、されないかの判断基準になるからです。
ある物が廃棄物なのか、廃棄物ではないのかを判断するためにはその物が「不要物であるかどうか」の判断が必須であるところ、それを判断するために誰でも見れば分かる判断基準がなければ「これは自分にとっては価値のある物だから不要物ではない。だから廃棄物ではない。したがって廃棄物処理法は関係ない」という話になってしまいます。
現在、その判断基準については次のように考えられています。
- 基準その1 その物の性状
- 基準その2 排出された状況
- 基準その3 通常の取扱状況
- 基準その4 取引価値の有無
- 基準その5 占有者の意志
「不要物(廃棄物)なのか「有価物(廃棄物ではなく、他人に買取ってもらえる価値ある物)」なのか、この違いが廃棄物実務において大きく作用してきます。
つまり「有価物」は「廃棄物」ではありません。「廃棄物ではない」と言うことは廃棄物処理法の規制対象から外れますので、委託契約書やマニフェストも必要ありません。さらに言えばそれをいかに取り扱おうが「産業廃棄物処理業」の許可が不要なのです。
4.1円でも価値があれば「有価物」なのか
で、あればこのような理屈が生まれる想像がつきますね。
「この物は1円で買い取って貰ったものだから有価物だ。」
確かに当事者間で「1円」という値段がつけられたことそれ自体は取引価値があるという判断材料にはなるかも知れません。
では、1円での取引を継続的に行って経済的に意味はあるでしょうか。ビジネスとして成り立つでしょうか。
また、1円の物を運ぶ運賃、保管の費用、それらは誰が負担するのでしょうか。
1円という売却価格を得るためにそれ以上の運賃や費用を負担しているのはなぜでしょうか。
ある物が「廃棄物」なのか「有価物」なのか分からない場合、勝手な判断で「有価物」と判断してしまうのは極めて危険です。もしそれが廃棄物だったら、許可を得ずに行った行為は全て廃棄物処理法違反に問われます。