この記事の要点
- 産業廃棄物の収集運搬基準は、廃棄物処理法施行令第6条第1項第1号に定められている。
- 運搬車には「産廃の運搬車である旨・氏名/名称・許可番号」の3点を、規定の文字サイズで両側面に表示する義務がある。
- 積替えを行う場合は、保管場所の要件(囲い・掲示板・保管上限)も別途満たす必要がある。
収集運搬基準とは何か
産業廃棄物の収集運搬基準とは、産業廃棄物を収集・運搬する際に守らなければならない、廃棄物処理法施行令第6条第1項第1号に定められたルールのことです。
産業廃棄物が運搬の途中で飛び散ったり漏れ出したりして、周辺の生活環境や公衆衛生に悪影響を及ぼすことを防ぐために設けられています。排出事業者はもちろん、実際に収集運搬を行う産業廃棄物収集運搬業者にとっても、日常の業務で常に意識しておくべき基準です。
この記事では、収集運搬基準の中身を「共通ルール」「運搬車の表示」「船舶運搬」「特別な廃棄物の取扱い」「積替え保管」の5つに分けて、実務でつまずきやすいポイントを中心に解説します。
収集運搬に共通する3つの基本ルール
収集運搬基準では、次の3点が共通の大原則として定められています。
| 項目 | 求められる対応 |
|---|---|
| 飛散・流出 | 防止すること |
| 騒音・振動・悪臭 | 生活環境保全上支障がないよう必要な措置を講じること |
| 収集運搬施設 | 生活環境保全上支障がないよう必要な措置を講じること |
さらに、実際に廃棄物を運ぶ運搬車・運搬容器等についても、飛散・流出・悪臭漏れがないようにすることが求められます。基本はシンプルですが、「支障がない必要な措置」の具体的な中身は廃棄物の性状や運搬方法によって変わるため、個別の判断に迷う場合は許可行政庁や専門家に確認することをおすすめします。
運搬車の表示義務と備え付け書面
運搬車には車体の両側面に3項目を規定の文字サイズで表示し、あわせて排出事業者・処理業者それぞれの情報を記載した書面を備え付ける必要があります。
表示方法・表示内容
運搬車には、車体の両側面に次の内容を表示する必要があります。
| 表示内容 | 文字サイズの目安 |
|---|---|
| 産業廃棄物の運搬車である旨 | 140ポイント以上 |
| 氏名又は名称 | 90ポイント以上 |
| 許可番号(許可番号の下6桁) | 90ポイント以上 |
文字サイズにも基準があるため、「表示はしているが小さすぎる」といった状態は基準違反になり得ます。運搬車を導入・更新する際は、表示のレイアウトと文字サイズを必ずあわせて確認しましょう。

備え付けるべき書面
運搬車には、収集運搬の事実を証明する書面等の備え付けも義務付けられています。備え付ける書面の内容は、排出事業者側と処理業者側とで異なります。
- 排出事業者に関する情報
- 氏名・名称、住所、産業廃棄物の種類・数量、積載日、積載した事業場の名称・連絡先、運搬先の事業場の名称・連絡先
- 処理業者に関する書面
- ①許可証の写し、②マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写し等
これらの情報・書面が運搬中に確認できない状態は、収集運搬基準違反となるおそれがあります。運搬前のチェックリストに組み込んでおくと安心です。
石綿含有産業廃棄物・水銀使用製品産業廃棄物の取扱い
石綿含有産業廃棄物と水銀使用製品産業廃棄物は、「破砕しない」「区別する」「混合しない」の3点を守る必要があります。
一般の産業廃棄物とは別に、次の2種類については収集運搬時に特別な配慮が求められます。
- 石綿含有産業廃棄物(石綿を重量の0.1%を超えて含有するもの。廃石綿等は除く)
- 水銀使用製品産業廃棄物(水銀電池、蛍光ランプなどの廃棄物が対象)
これらについては、「破砕しないこと」「他の廃棄物と区別すること」「他の廃棄物と混合しないこと」が基準として定められています。石綿や水銀は、破砕や混合によって飛散・拡散するリスクが高いため、他の産業廃棄物以上に慎重な取扱いが求められる点を押さえておきましょう。
積替え保管の基準
積替えを行う場合は、保管場所の囲い・表示掲示板の設置に加え、保管量や保管期間についても基準を満たす必要があります。
収集運搬の途中で産業廃棄物を一時的に別の場所に移し替える「積替え」を行う場合は、保管に関する基準も追加で適用されます。
保管場所の要件
積替えのための保管場所には、次のような要件があります。
- 周囲に囲いを設けること(廃棄物の荷重がかかる場合は、構造耐力上安全なものであること)
- 積替え場所である旨の掲示板を設置すること。
- 掲示板の寸法:60cm×60cm以上
- 掲示内容:保管する産業廃棄物の種類(石綿含有産廃、水銀使用製品産廃、水銀含有ばいじん等を含む場合はその旨)、管理者の氏名・名称・連絡先、最大積み上げ高さ(屋外保管かつ容器を用いない場合)、保管可能量
汚水対策・積み上げ高さの制限
飛散・流出・地下浸透・悪臭を防止するため、次のような措置も必要です。
- 汚水対策として、必要な排水溝の設置や、底面を不浸透性材料にすること
- 屋外で容器を用いずに保管する場合の積み上げ高さの制限(囲いとの位置関係に応じた勾配ルールが定められています)
- 使用済自動車等を屋外保管する場合の高さ制限(保管場所の囲いから水平3m以内は高さ3m以内、水平3m以上では高さ4.5m以内など)
- ねずみ・蚊・はえその他害虫の発生防止
また、石綿含有産業廃棄物・水銀使用製品産業廃棄物を積替え保管する場合は、他の廃棄物と混同しないよう仕切りを設けるなどの措置が別途必要です。

保管の原則と例外
積替えのための保管は、本来は必要最小限にとどめるべきものとされており、次のような考え方が基準になっています。
- 運搬先があらかじめ定められていること
- 適切に保管できる量(1日あたりの平均的な搬出量の7倍を超えない量が目安)であること
- 性状に変化が生じないうちに搬出すること
なお、船舶で運搬する場合や使用済自動車等の保管については、上記と異なる例外的な取扱いが定められています。自社の運搬方法・保管方法がどのケースに該当するかは、個別に確認しておくと安心です。
収集運搬基準に違反した場合のリスク
収集運搬基準は努力目標ではなく、法令上の義務です。違反が確認された場合、行政指導や改善命令の対象となるだけでなく、産業廃棄物収集運搬業の許可取消しや事業停止処分につながる可能性もあります。表示の不備や書面の備え付け漏れなど、一見軽微に見える点でも指摘の対象になり得るため、日常的な確認体制を整えておくことが重要です。
まとめ
産業廃棄物の収集運搬基準は、①飛散・流出防止などの共通ルール、②運搬車の表示・書面備え付け、③船舶運搬の基準、④石綿・水銀使用製品廃棄物の特別な取扱い、⑤積替え保管の基準、という5つの柱で構成されています。
いずれも「知らなかった」では済まされない法令上の義務です。許可の取得・更新を検討している事業者様、日々の運搬業務の基準を見直したい事業者様は、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q.運搬車の表示は具体的にどこに何ポイントの文字で表示すればよいですか?
A. 車体の両側面に、①産業廃棄物の運搬車である旨を140ポイント以上、②氏名または名称、③許可番号(下6桁)をそれぞれ90ポイント以上の文字で表示します。
Q.積替え保管ができる量に上限はありますか?
A. 明確な絶対値ではなく、「1日あたりの平均的な搬出量の7倍を超えない量」であること、性状に変化が生じないうちに搬出することが基準とされています。船舶運搬や使用済自動車等の保管には別の例外規定があります。
Q. 石綿含有産業廃棄物と水銀使用製品産業廃棄物は同じ扱いですか?
A. 対象物は異なりますが、収集運搬時に「破砕しない」「他の廃棄物と区別する」「混合しない」という基準が共通して適用される点は同じです。
Q.収集運搬基準に違反するとどうなりますか?
A.行政指導や改善命令の対象となるほか、産業廃棄物収集運搬業の許可取消しや事業停止処分につながる可能性があります。
関連記事
執筆者・監修者情報

方波見 泰造(かたばみ たいぞう)
ハイフィールド行政書士法人 代表社員
所属
宮城県行政書士会
専門分野
産業廃棄物許可
主な取扱業務
産業廃棄物処理施設設置許可申請
産業廃棄物処分業許可申請
産業廃棄物収集運搬業許可申請
更新許可・変更許可・変更届
産廃関係許認可顧問








