金属スクラップの買取業(金属くず買受業)を営んでいる方、これから始めようとしている方に向けて、新しく施行された「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」の内容と、事業者が必ず対応しなければならない届出・本人確認・記録保存の義務について、行政書士が分かりやすく解説します。
太陽光発電設備や電線・マンホールなどの銅線盗難が全国で急増している社会背景を受けて制定されたこの法律は、金属くずを買い取る事業者に対して警察への届出や取引相手の本人確認を義務付けるものです。届出を怠ったまま営業を続けると、行政処分や刑事罰の対象になる可能性があるため、正しい理解と早めの対応が欠かせません。

この記事でわかること
- 「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」がどのような法律か
- 「特定金属くず買受業」に該当する事業の範囲
- 営業開始・変更・廃止のときに必要な届出の内容と期限
- 本人確認・記録保存など、日々の営業で守るべき義務
- 違反した場合の行政処分・罰則
- 届出手続きを行政書士に依頼するメリット
「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」とは
この法律は、盗まれた金属製品(銅線、マンホールの蓋、太陽光発電設備の部材など)が金属くず買取業者を通じて処分されてしまうことを防ぐために制定されました。
金属くずの買取業を営む事業者に対し、以下が義務付けられています。
- 営業所ごとの届出
- 買取相手の本人確認
- 取引記録の作成・保存
- 盗品の疑いがある場合の警察への申告
盗難品が市場に流通することを防ぎ、あわせて金属を切断する工具(ケーブルカッターやボトルクリッパー等)を正当な理由なく隠して持ち歩く行為も禁止しています。
「特定金属くず買受業」に該当する事業とは
法律の対象となるかどうかを判断するために、まず用語の定義を押さえておく必要があります。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 特定金属製物品 | 銅など、窃盗防止の必要性が高いとして政令で定められた金属を使って作られた製品 |
| 盗難特定金属製物品 | 窃取(盗難)された特定金属製物品 |
| 特定金属くず | 主に特定金属で構成される金属くず(製造過程で生じるものや古物営業法上の「古物」に該当するものは除く) |
| 特定金属くず買受業 | 特定金属くずの買受け(金銭以外の対価による取得を含む)を行う営業 |
ポイントは、製造工程で発生するくずや、古物営業法の「古物」に該当するものはこの法律の対象外という点です。どちらの法律の許可・届出が必要になるかは事業の実態によって判断が分かれます。
営業を始める前に必要な「開始の届出」
特定金属くず買受業を営もうとする場合、営業開始の前日までに、営業所を管轄する警察署(公安委員会)へ以下を提出する必要があります。
- 氏名または名称、住所などを記載した届出書
- 国家公安委員会規則で定める添付書類
営業所を追加する場合や、所在地を変更して新たに営業所を構える場合も同様に、事前の届出が必要です。届出をせずに営業を始めた場合は刑事罰の対象となるおそれがあるため注意してください。
営業開始後に必要な「変更の届出」「廃止の届出」
変更の届出(変更から14日以内、登記事項証明書が必要な場合は20日以内)
次のいずれかに変更があったときは、期限内に届出が必要です。
- 氏名または名称
- 住所
- 法人代表者の氏名(代表者交替を含む)
- 営業所の名称
- 営業所の電話番号・メールアドレスなどの連絡先
- 特定金属くずの保管場所の所在地
廃止の届出(該当日から14日以内)
- 特定金属くず買受業を廃止したとき
- 営業所の所在地を変更するとき
- 届出者が死亡した、または法人が合併により消滅したとき
いずれも期限が短く設定されているため、変更が生じたタイミングで速やかに手続きを進めることが重要です。
営業所での「氏名等の表示」義務
届出を行った事業者は、営業所ごとに公衆から見やすい場所に、判読できる大きさ・書体で以下を掲示しなければなりません。
- 氏名または名称
- 届出をした公安委員会の名称
- 届出番号
さらに、ウェブサイトを保有している場合(かつ常時使用する従業員が6人以上の場合)は、ウェブサイト上にも同じ内容を掲載する義務があります。ホームページで金属くず買取を案内している事業者は見落としやすいポイントなので、あわせてチェックしてください。
買受けの相手方に対する「本人確認」義務
特定金属くずを買い取る際は、相手方の本人確認が原則として必須です。
| 相手方の区分 | 確認方法(例) |
|---|---|
| 自然人・対面取引 | 顔写真付き本人確認書類(運転免許証、在留カード、個人番号カードなど)の提示 |
| 自然人・非対面取引 | 本人確認書類の画像+容貌の画像の送信、またはICチップ情報+容貌画像の送信 |
| 短期滞在外国人 | 旅券(パスポート)等の提示 |
| 法人 | 登記事項証明書・印鑑登録証明書等の提示、または名称・所在地の申告+登記情報の送信 |
本人確認が不要になるケース
- 過去に取引実績があり、代金を相手方の預貯金口座への振込みで支払う場合
- 事業者自身が特定金属くずを輸入する場合
記録の作成・保存義務(本人確認記録・取引記録)
本人確認を行った場合、および買受けを行った場合は、それぞれ直ちに記録を作成し、3年間保存する必要があります。
取引記録に記載すべき事項の例
- 買受けの相手方の氏名または名称
- 買受けの日付・時刻
- 買い受けた特定金属くずの特徴、量、価格
- 代金の支払方法(口座振込の場合は口座番号も記載)
- 相手方の本人確認のためにとった措置の方法
対面取引であっても、本人確認書類の写しを保存する必要がある点に注意してください。
盗難品の疑いがある場合の警察への申告義務
取引の態様などから、買い受けた特定金属くずが盗難品に由来する疑いがあると認めたときは、直ちに警察官へ申告しなければなりません。
違反した場合の行政処分・罰則
法律を遵守しない場合、指示処分・営業停止命令といった行政処分に加え、以下のような刑事罰が科される可能性があります。
| 違反行為 | 罰則の目安 |
|---|---|
| 営業停止命令への違反 | 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科 |
| 指定金属切断工具の隠匿携帯禁止違反 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 無届営業、名義貸し | 6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科 |
| 虚偽の届出、報告拒否・検査拒否など | 30万円以下の罰金 |
法人の代表者や従業員が違反行為を行った場合、法人自体にも罰金刑が科される「両罰規定」が設けられている点にも注意が必要です。
また、拘禁刑は他の建設業や産業廃棄物処理業の欠格事由とされています。例えば役員等が盗難特定金属製物品関係で拘禁刑に科された場合は建設業や産業廃棄物処理業許可も連鎖的に取り消しとなります。
よくある質問
Q. すでに金属くず買取業を営んでいますが、この法律の施行後も続けられますか?
A. 施行の際に現に営業している場合、施行日から3か月を経過する日までは引き続き営業できる経過措置が設けられています。ただし、その期間内に届出を行う必要があります。
Q. 古物商許可を持っていれば、この届出は不要ですか?
A. 古物営業法上の「古物」に該当する金属くずは対象外とされていますが、実際に取り扱う品目が「古物」に当たるかどうかは個別の判断が必要です。両方の許認可が必要になるケースもあるため、事業内容を整理したうえで確認することをおすすめします。
Q. 届出をしないまま営業した場合、すぐに刑事罰になりますか?
A. 無届出での営業は罰則の対象となり得る行為です。まずは行政処分(指示・営業停止)の対象となる場合もありますが、早期の届出によってリスクを回避できます。
Q. 本人確認や記録の保存はどこまで厳密に行う必要がありますか?
A. 対面・非対面、相手方が個人か法人かによって確認方法が細かく定められています。記録は3年間の保存義務があるため、社内の運用ルール・書式をあらかじめ整えておくことが重要です。
まとめ|届出・記録整備は早めの準備がカギ
「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」は、金属くず買受業を営むすべての事業者に、届出・表示・本人確認・記録保存という複数の義務を課すものです。特に、
- 営業開始前の届出
- 変更・廃止時の期限内届出
- 本人確認記録・取引記録の3年間保存
は日常の営業に直結する部分であり、対応漏れがあると行政処分や刑事罰につながるおそれがあります。
当事務所では、特定金属くず買受業の開始届出書・変更届出書・廃止届出書の作成から、必要書類の収集、本人確認・記録保存体制の整備まで、事業者様の状況に合わせてサポートしております。
「自社の事業がこの法律の対象になるのか分からない」「届出書類の作成を任せたい」という方は、お気軽にお問い合わせください。初回のご相談で、必要な手続きと進め方を整理いたします。
執筆者・監修者情報

方波見 泰造(かたばみ たいぞう)
ハイフィールド行政書士法人 代表社員
所属
宮城県行政書士会
専門分野
産業廃棄物許可
主な取扱業務
産業廃棄物処理施設設置許可申請
産業廃棄物処分業許可申請
産業廃棄物収集運搬業許可申請
更新許可・変更許可・変更届
産廃関係許認可顧問






