油水分離施設は、廃水中に含まれる油分を効率的に分離・除去し、再利用や適切な処分を可能にする重要な役割を担っています。廃水に混じる油分は、そのままでは公共用水域への放流や廃油としての処理が困難です。油水分離施設では、こうした廃水から油分を分離し、リサイクル可能な廃油として利用したり、適切な処理を行うための準備を行います。
油水分離の目的
廃水中に油分が多く含まれている場合、そのまま公共用水域に放流することは禁じられています。また、含有する水分の割合が高い場合には、廃油としての処理や再利用も難しくなります。そこで、油水分離施設は、焼却や再利用を容易にするための前処理として油分を分離します。このプロセスにより、環境保護とリサイクルの促進を同時に達成できるのです。
油水分離は、廃水処理の初期段階で行われ、環境負荷を大幅に軽減するだけでなく、廃油の効率的なリサイクルを可能にします。廃油の再利用は、資源の有効活用を促進し、持続可能な社会の実現に寄与します。
油水分離の主な方法
油水分離には、さまざまな技術が使用されます。以下のように、廃油の状態に応じて、適切な方法が選択されます。
1.重力分離
重力分離は、油と水の比重の差を利用して行う方法です。比重の軽い油が水面に浮かび上がる性質を利用し、油分を効率的に分離します。この方法は、油滴が比較的大きな廃水の処理に適しており、大型の含油廃水を迅速に処理できるため、多くの施設で採用されています。しかし、油滴が小さい場合には、重力分離だけでは不十分な場合があります。小さな油滴は水中に溶解しやすく、十分な分離が困難です。
2.粗粒化分離
粗粒化分離では、親油性・疎水性を持つ特殊な不織布を使用して微細な油滴を吸着し、大きな油滴に変える技術を利用します。この方法は、微細な油滴を扱う場合に効果的で、より精度の高い分離が可能です。粗粒化によって油滴が大きくなり、分離作業が容易になるため、重力分離では不十分な油水分離の補完手段として使われることがあります。
3.加圧浮上分離
加圧浮上分離は、水に圧力を加えて空気を溶解させ、圧力を解放することで水中に微細な気泡を発生させます。これらの気泡に油分が付着し、油と一緒に水面に浮上する仕組みです。この方法は、油分を効果的に水から分離するだけでなく、速やかな処理が求められる場合にも有効です。微細な油滴でも、気泡に付着して浮上するため、高精度の油水分離が可能です。
4.凝集沈殿分離
凝集沈殿分離は、凝集剤を利用して廃水中の浮遊物質(SS)に油分を吸着させる技術です。この方法では、油分とともにSSも一緒に除去するため、再利用が難しい場合に利用されます。凝集沈殿分離は、特に廃水処理の後段階で、廃油の再利用よりも除去を重視する際に活用されることが多いです。
油水分離施設のメリット
油水分離施設の導入により、廃水から油分を効果的に除去できるだけでなく、処理コストの削減や環境保護にも大きく貢献します。再利用可能な油分を回収することで資源の再利用が進み、廃水処理全体の効率も向上します。また、油分を適切に処理することで、施設の維持費や廃油処分のコストも削減され、企業や施設運営者にとって経済的なメリットも大きいです。
まとめ
油水分離施設は、廃水処理において欠かせない装置です。重力分離、粗粒化分離、加圧浮上分離、凝集沈殿分離など、さまざまな技術を活用し、廃水から油分を効率的に分離することで、環境への負荷を軽減し、資源の有効活用を促進します。適切な油水分離施設の運用により、企業は環境保護に貢献すると同時に、コスト削減や効率的なリサイクルを実現できます。